Apr 15, 2017
(ふむふむ、これがヨーヘンテンモクね)ハモンさん、そっちは油滴天目です。
(どっちでもいいわ・・・これゴハン皿じゃないの?)重要文化財ですよ!
(いいから遊んでよね)う、うん、書き終わったら・・・。
踊ったり観劇したりが人生のヨロコビの飼い主には、もうひとつ、
茶道という超ほそぼ〜そ続けている10年来の趣味があります。
そのわりには侘びて寂びた茶道具だけを見に行くのがなんだかめんどくさく、
茶人のおばあさまたちとガラスケース前で鼻つき合わせて見るのもすごくめんどくさく、
今まであまり展覧会には行っていなくて・・・。
それに茶道具はルックス的に地味なものが多いので、その道具の持つストーリーに心惹かれないと
自分のキモチ的に感じるものがないなぁなんてナマイキなことも思ってました。
でもそれって茶人的には若気の至り、タダの経験不足だったってことなんですよーー。
今回その重い腰を上げた理由のひとつは、あちこちの名茶碗を一堂に会させ茶の湯の流れが
系統だって見られるグレートな展覧会が始まったから。
長年ガサツでグータラきわまりないお稽古をしていて先生にご迷惑をかけまくってきたのですが
さいきんかなり反省してちょっと難しいお点前に精進中、いっきに興味が高まってきたんどす。
これも経験に導かれた欲求ってことで、ついにオトナの階段のぼったみたいです。
てことで、今日は東京国立博物館 /トーハク(これ自分たちで言ってるのがどうも・・・)で
4/11からスタートした茶の湯展を暑苦しく語りたいと思います。
こちら、もちろん茶碗だけじゃなく茶の湯で使われるあらゆるもの、その国宝・名品が大集合です。
しかし、これがまたおそろしくイケズな展覧会でしてね・・・
会期の間、期間限定で展示されるもののなんと多いことか。
しかもそれらは絶妙に期間をずらして展示されるため、少なくとも4回は会場に行かねば
話題のアレコレを見ることが出来ないようになってるんですよっ。
しかも中には10日あまりしか展示しないものまで。やるわね、トーハク。
行かれる方はこちらのリストに目を通し、スケジュールチェックすることをおススメしますよー。
なにはともかくまずは前期の期間限定な目玉のひとつ、国宝「曜変天目・稲葉天目」。
世田谷の静嘉堂文庫美術館が所有しており、1~2年にいっぺん公開するので見たことがあるのですが
ものすごく異次元に連れていかれます!吸い込まれるような美しさに心奪われます!
(曜変天目茶碗を上から見たところ。静嘉堂文庫美術館HPより)
おもわずご観覧中のご年配と顔がくっつきそうになっても気にならない、この写真の100倍の美しさです。
焼きの過程の偶然で生まれたその輝きは、よく小宇宙にもたとえられており
とてもこの中に抹茶入れて茶筅シャカシャカ振って点てるなんて想像もつかないですわ。
これを美しく思う気持ちは、自然への畏敬の念にも似たものを感じます。
こちら5/7までなので熱く語ったものの、見逃しても静嘉堂文庫では見る機会あると思うのでご安心を。
他にこの仲間の重要文化財・油滴天目茶碗は2点出ておりますが、これらは通期です。
(油滴天目茶碗。展覧会図録より)
その油滴天目もこの写真の1000倍美しいんですが、こちらはこの螺鈿の天目台を見ていただきたいですっ。
天目茶碗というのは、この天目台がついて初めて一人前なのですが
今まで知っていたのはストイックな黒一色のものだったので驚きました。
他に白天目やすばらしい志野焼やらの茶碗、マエストロ長次郎の素晴らしき楽茶碗たちなどが
長い年月を経て割れずにここに存在している奇跡に感謝したくなります。
とりわけ、よく見なければ地味の極みの楽茶碗なのですが
長次郎の楽茶碗はホントに味わいが違う。とくに赤楽茶碗の景色のよさと言ったら・・・!
そして長い年月をかけて人々が使ってきた、名物のもつパワーがみなぎっているんです。
お茶碗は使うことによって育つことをマジで実感。
(展覧会図録より赤楽茶碗「無一文」。期間限定です)
あぁー・・・こんなすっとぼけた写真じゃぜんぜん良さが伝わらない・・・。
ちなみにお茶人の方々が釉薬・胎土が美しく模様を描いて、何かの風景を想像させるような茶碗のことを
景色がよいと褒めるのを聞いて感銘を受け、いつか言ってみたかった・・感無量です(そこ?)。
こちらも景色がよいですなぁ。(黄天目・珠光天目。展覧会図録より)
今回強く思ったのは、写し(コピーのことです)でない、茶碗をはじめ棗や茶入・茶杓・茶壺など
人の手がお点前と喫茶を通してふれるものは
歴史上の人たちがじっさいこれを手にした、彼らの手の大きさなどをリアルに想像して
怖いほどその存在を感じてしまいました。
信長や秀吉がこれに触れたのだ、とか思ったらかなり興奮するじゃないですか!
(展覧会図録より、信長・秀吉・家康が所有した唐物茶壺「松花」。期間限定)
利休が使ったこの茶碗と茶杓で秀吉が薄茶をのむ、とか興奮しますよねっ?
これがいわゆる鑑賞するための美術品たちとはおおきく違うところだなぁと感じ入りながら鑑賞しました。
全体の展示概要は、12世紀に中国から渡来した喫茶が足利義政の時代に権力者の間で一気に広まり、
千利休の時代に侘び茶が大成します。利休の死後、独特の美意識をもつ織部の時代を経て
やがて「きれいさび」と呼ばれる平安時代の公家の茶風への復興などがあらわれ、
仁清を代表とする典雅な茶道具が登場し、いっきに華やかな側面も見せるようになりました。
その流れが実にわかりやすく、茶道を知らない人たちにはもちろんのこと
私のような勉強不足モノにもとても興味深い展示でしたね。
この後半で、仁清のそれはそれは美しく典雅な茶壺が展示されていて
ここまでのところ、自然の土の色と釉薬の色ばかり見て来たのに
突然現れた極彩色とも言える華やかさで、思わず目を奪われ惹きつけられましたよ。
(あぁこれも写真じゃ伝わらない。仁清の「色絵若松図茶壺」展覧会図録より)
とはいえ、やっぱり侘び寂びのもつストイックさで明鏡止水、心を落ち着けられるのが
日本の茶道のよさだと思うわたしは利休好みが好きだなぁ、と思うにいたっては
さらにオトナの階段をのぼったのかもしれません。
その後、幕末から明治にかけて大名家や旧家から流出した茶道具を
数寄ものの実業家が収集して一大コレクションを築き上げました。
そのコレクションの代表的なものも4期にわけて公開されています。
今期は藤田香雪・関西の大実業家のコレクションですが、この方もそうとう茶道具にとり憑かれていたようです。
逸話として、長年探していた香合がようやく手に入ったことを晩年の病床で聞き
それはそれは嬉しそうに、”そうか・・・手に入ったか・・・ガクッ”。
思い残すことないってそんなー!とか解説聞きながら思わずツッコミましたけど。
(交趾大亀香合。展覧会図録より)
これがその香合なんですけどね。えーいいけどそこまで?まだまだわたくし修行が足りぬようです。
最後にオーディオガイドについてですが、時間にかなりゆとりのある方は借りても楽しめると思います。
ただ、膨大な展示物を解説聞きながらのんびり見ていると、めっちゃ時間かかります。
ふつうのナレーションと落語家の春風亭昇太さんがダブルで話しているのもあるのかな。
その良さもあるんですが、掲出されてる解説読むだけでもけっこう理解出来ると思います。
さらに図録買えば鬼に金棒。
図録+油滴天目の茶碗型カード買いました。型抜きが愛せるー。
それと解説のボーナストラックで、有名な古典落語「茶の湯」を昇太さんが披露しています。
が、時間なくてゆっくり聞いてられなかった・・・
ともかく(これでも)気になったポイントだけ感想書きましたが、
ホントはへうげもの・織部のことも書きたかったし(織部の茶室が再現されてます)、
茶杓とか唐物とか歴史とか流派のこととか細かく書くとこの3倍くらいかかりそうです。
ホント今回の良さは端的に伝えるの難しいなぁ。
(ただ話が長過ぎるんじゃないのぉー?先に寝るね。)