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Apr 9, 2017

映画館でバレエ・その2

映画館でバレエ・その1があったからには、とうぜんその2があるわけでして・・・しつこくてスミマセン。

(えーまたやたら長いやつー?ネコの話はぁー?)

それはまた今度ね!

ここ数年、英国ロイヤルバレエ団は、本拠地ロンドンのロイヤルオペラハウスで上演される公演を

ほぼ同時に世界各地に配信するライブビューイングを定期的に行っています。

日本は時差があって結構なタイムラグが生じてしまうため、この映像を中継としてではなく1週間ほど上映しています。

ライブでなくても最新の舞台映像振付家や作曲家、ダンサーなどのインタビューなどにより、

作品への理解を深めながら観られるというのは

ふだんバレエやオペラを観ない人たちにも、観劇LOVERたちにもよい企画だなぁと思います。

全国の主要なTOHOシネマズで展開するロイヤルバレエ・シネマシリーズとして展開されており

インタビューも舞台上のモノローグなど全部字幕がつきますので、

I am poor at English な飼い主でもバッチリです。ホント、ありがたいわぁ〜

http://tohotowa.co.jp/roh/

で、今回はそのひとつ、「ウルフ ワークス」です

この演目は、英国ロイヤルバレエ団の常任振付家であるウエイン・マクレガー

イギリスの代表的な作家のひとり、ヴァージニア・ウルフを題材にして初めて長幕に挑戦したもの。

2年前のワールドプレミア時はその革新性に大きな話題となり、数々の賞に輝いた作品で、

今年の年明けに再演があり、そのライブビューイング映像が上映されました。

飼い主は、2年前の初演時にシルヴィ・ギエムの引退公演を観るためにロンドンに行っており、

ちょうどロイヤルバレエのシーズン中ならロイヤルオペラハウスでいくつか観劇しないともったいないな、と

チケットを取った公演のひとつが、このウルフ ワークス。

ウエイン・マクレガーってかなり先鋭的な舞台作りをする印象だけど三幕モノとかってどうなんでしょう、大丈夫かな、と

杞憂したのはアホかと思うほど衝撃的な感銘を受け、もういちど観たいと焦がれていた作品です。

それが初演主要キャストはそのままで観られるとあっては興奮をおさえられません!

というのもロイヤルバレエの看板ダンサーたち大量投入のめっちゃ豪華なキャストにプラス、

一度は引退して伝説化するほどの女優ダンサー アレッサンドラ・フェリが、

ヴァージニア・ウルフ役でゲスト出演してるんですよ!ハァハァ

公式サイトより©Tristram Kenton

この作品はヴァージニア・ウルフの小説「ダロウェイ夫人」「オーランドー」「波」の3つをベースに

彼女のエッセイ・手紙・日記など私生活をおりまぜて展開されています。

1幕目はダロウェイ夫人(スートリーはコチラ)をベースにした” I Now, I Then”.

公式サイトより©Tristram Kenton

シンボリックな舞台美術とともに

小説ダロウェイ夫人の登場人物たちと、ウルフ自身とその夫や元恋人、友人などが交錯し、物語を紡ぎます。

そのなかで、フェリの存在感はもちろんのこと、なんといってもお気に入りはこの人エドワード・ワトソン、

 病んだ役をやらせたら天下一品ですっ!最高。

不思議の国のアリスのウサギ役も好きなんですけどね

(エドと、日本人プリンシパルの高田茜さん)公式サイトより©Tristram Kenton

エドは戦争による神経症に苦しむ元義勇兵を、個性あふれる演技と高い身体能力で見せてくれました。

また、ダロウェイ夫人と、若い時代のウルフが行き来するようなベアトリス

ダロウェイ夫人の親友サリーと、私生活でウルフと同性愛関係にあったと言われるヴィタが混じりあうフランチェスカ

ふたりの瑞々しさがフェリの成熟感といい対比で、まさに-Now and Then –今そしてこれからを象徴していたと思います。

2幕はオーランドー(ストーリはコチラ)をベースにした ”Becoming

1幕とはうって変わって光・レーザーを駆使した照明の中、性と時空を超越してしまった青年貴族のオーランドーになぞらえて

大勢のダンサーたちが近未来感あふれる衣装やメイクをまとい、息もつかせぬすさまじい超絶技巧を繰り広げます。

公式サイトより©Tristram Kenton

いったいみんな関節どこにあるの???

いやー、すごかったのなんのって・・・ホントに息をつめて観すぎて呼吸困難になったんですよー。

なかでも強いテクニックと身体能力が、コンテンポラリーな振付に実に素晴らしくいきるオシポワが圧巻です。

初演では超絶テクニックを誇るマックレー先輩ですら霞みそうな勢いでしたが、

今回は良いバランスで拮抗したパートナーとなって、ペアとしても見応えありました。

(初演時のパンフレットより、オシポワとマックレーのリハーサル風景。どうなってるんだね、このカラダ)

サラ・ラムも強靭な一面を見せ、演劇的なロイヤルバレエダンサーたちの

テクニックの底力も見せつけられた幕でしたね。

初めてこの舞台を観た時に、もうこの幕が終わる頃は斬新なクリエーションの洪水に興奮し、

その創造性にたいして飼い主の脆弱なCPUが処理しきれないようで、幕間は震えが止まりませんでしたよー。

3幕は「波」をベースにした“Tuesday”

世界一美しい遺書とよばれるウルフの遺書のモノローグから始まり、波の映像が流れます。

マクレガーによれば、このタイトルはその遺書の最初の言葉からなんだそう。

え?ちゃんとTuesday聞こえてたかって?もちろんわかっていませんでしたとも(涙)

公式サイトより©Tristram Kenton

波の音が流れ、波打つ様子や海の底を感じさせ、それに身をまかせるようなムーブメントは

「波」は非常にポエティックで抽象的だ、とマクレガーが言っていることをそのまま体現しているよう。

また入水自殺したウルフの心情も現しているのだと思います。

そしてロイヤルバレエスクールの子どもたちから、ソリスト、プリンシンパルまでが

そのムーブメントを一体となってユニゾンしている光景は、素晴らしいフィナーレでした。

ところで、このフィナーレで群舞なみなさんはサンゴを模したヘッドピースのようなものをつけていたのですが、

わたくしロンドンにて舞台を鑑賞時はオペラグラス使ってなかったこともあって

ゴーグルにシュノーケルつけてたと思ってました・・・誤解が正せて本当によかったわ・・・。

いくら波だ、海だって、あの舞台美術や衣装の流れでこの認識はあんまりなので、

これからはちゃんとオペラグラス使う決心。

そして幕間はライブビューイングならではの、お楽しみコンテンツがいろいろです。

それぞれどの幕間だったかは記憶が曖昧なのですけど、フェリやサラ・ラムらダンサーのインタビューはじめ、

マクレガーそして作曲家のリヒターのインタビュー、どれも創作過程が垣間見えてとても良かった。

とくにリヒターの誰もが知っているメロディにちょっとした違和感を仕込んで感情を動かす

というのを実演していたのが、とっても興味深かったですー。

それから!ヴァイオレットおばあさま(ダウントンアビー見てない方スミマセン)が朗読をしてました!

彼女の声好きなの、嬉しかったな。

(ヴァイオレット先代伯爵夫人ことマギー・スミス。ダウントンアビーオフィシャルサイトより

ちなみに、上記の中のマクレガーの言葉の引用はコチラから。

これこの作品が好きな人は頑張って読む価値あるインタビューだなぁと思いました。

情緒的、感情的な英語が多用されてる芸術系の記事はハードル高いんですけどね

(スキンヘッドのマクレガー氏。independent.co.jpより

このインタビューの最後にマクレガーが言っている

“But I think it’s the responsibility of a big lyric opera house to offer work that is on the edge.

If they don’t, and they only present things that are easy to watch and that they know people already like,

that would kill off the art form. They have to be able to take risks.”

「人々がすでに知っているわかりやすい作品だけでなく、先進的な舞台を提供することはこのようなオペラハウスの責任であり、

リスクをとることが芸術を進化させる」ってホント大事なことだと思います。

(ちょっと意訳気味かな。いつものままだと芸術を殺してしまうのでリスクをとることが出来なきゃいけないって話ですよね)

日本だとなかなか難しいのだと思うけど。

(終わったの?)お待たせハモン、遊ぼうね。あ、目ヤニついてるよ。

 

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